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#3 国民を“道具扱い”する労働政策は——『さまよう派遣労働者』と『破産するベンチャー支配人』を生んだ

自民党版現代奴隷制度

中曽根内閣からはじまった労働政策。すでに紹介した「2つの合法化政策」のことだ。労働契約を比較すると、つぎのようになる。

労働契約の比較

この表の業務委託(請負)は、名ばかり個人事業主である。あくまで「使用者」から見た、選択肢としての“契約区分”を述べている。派遣労働者は、その他の非正規雇用や正規雇用と比べて、「労使交渉できない」ことが使用者のメリットである。ゆえに事実上の解雇に当たる「派遣切り」が容易にできる。

つまり、派遣労働者は「交換しやすい労働力」なのだ。

同じく業務委託(請負)は、労基法のコストが不要なうえに、労使交渉もできない。派遣労働者より、使用者のメリットがさらに多くある。

すなわち、業務委託(請負)は非正規を超えた「究極の労働力」だ。

派遣労働者は「大規模動員」が見込めるが、業務委託(請負)は「小規模」な応募者しか見込めない。したがって、労働力の動員規模から考えると、派遣労働者は使用者の「直接雇用の代替向き」であり、業務委託(請負)は使用者の「事業所委託向き」である。

こうした特徴を持つようになったのは、犯罪合法化に他ならない。

終戦直後の昭和20年はじめ、「直接雇用」を前提として、労働三法(労基法・労組法・労働関係調整法)が制定された。そこに40年くらいあと、派遣法の「間接雇用」が加えられる。そして、同時期に「労働者性判断で事業者をつくる基準(昭和60年報告)」もつくられる。

まずは、派遣法をざっと見よう。

先ほど述べた「労組法(団体交渉権など)の権利」を派遣先で派遣労働者に行使させない。派遣労働者は抵抗する術なく、派遣先の都合で事実上の解雇を受ける。

すなわち、「国民(主権者)を使い捨てる」道具扱いする制度なのだ。

2008年(平成20年)年末、日比谷公園には、多くの派遣労働者がテントの中で“年越し”を迎えていた。あなたは、つぎの映像を記憶しているだろうか。

派遣法が犯罪合法化の所以は、社会危機のたびに起こる「派遣切り」の惨劇にある。そして、「廃止」どころか「改悪」され続けてきた。

つぎのグラフに目をやりながら読んでほしい。

各政権における派遣労働者数と完全失業率の変遷

96年(平成8年)の橋本内閣は、26業種に拡大する。99年(平成11年)の小渕内閣では、ネガティブリスト(建設、医療、製造など)を除く原則自由化に踏み切る。

2004年(平成16年)の小泉内閣は、ネガティブリストを1年限定だが解禁。さらに2007年(平成19年)、1年から3年に延長された。

2008年(平成20年)の派遣労働者数は、198万3336人に達する。

つぎのグラフに目を移そう。

先に述べた製造業派遣の解禁と3年延長は、グラフの「04-08年」期を124万人に派遣労働者を爆増させた。

派遣労働者数の5年ごとの推移

製造業派遣の解禁は、工場周辺に「社宅つき」で働く派遣労働者を増やす。もし失職すれば、現住所も同時に失うリスクがあり、多くは無職のホームレスしか選択肢がなかった。

2008年9月の「リーマンショック」、さらに2011年(平成23年)3月の「東日本大震災」へと突入して行く。

これらの社会危機により「09-13年」期は、72万人が失職する。

最初のグラフに目を戻せば、2016年(平成28年)の安倍政権に大企業の倒産が相次ぎ、派遣労働に失業者が集中したのがわかる。

そうして2020年(令和2年)のコロナウィルスを迎えた。

ABCテレビ「シリーズ苦難のときこそ」は、『新たなホームレスを救え』を放送した。その冒頭で安倍元総理は「雇用と生活は断じて守り抜いていく」と言う。

しかし、日本にこうした危機が起こるたび、派遣労働者という国民(主権者)は、「道具(モノ)扱い」され、捨てられてきたのだ。

毎日新聞は、ある派遣労働者だった人のコメントをつぎのように伝えている。

「普通じゃない生活を選んだ自分の責任。」

ところが“普通じゃない”雇用制度をつくる政府が元凶なのだ。もともと1985年まで、「派遣」はだから犯罪だった―—

今度は、名ばかり個人事業主の「強制労働の実態」を見て行こう。

すでに紹介したILO強制労働条約は、「2つの判断基準」を規定している。メンバーたちが体験したスーパーホテルの「ベンチャー支配人制度」から「強制労働の実態」を検証する。

まずは、非任意性を確認して行こう。

つぎのように「虚偽条件」を信じ込ませて応募させる。それは「任意性の捏造」のためでもある。

スーパーホテルは、「有名媒体広告」と「行政や業界団体の認証」による信用創造によって、セミナー会場に呼び集める。そして、高額報酬という魅力的な「虚偽条件」を信じ込ませて応募させる。

ちょうど「日刊SPA!」に、つぎの「詐欺報道」が掲載された。

2025年(令和7年)5月29日にスーパーホテル事件のひとつ目が判決を迎えるはずだった。スーパーホテル側は勝訴を見越したのか——同年4月28日に『スーパーホテル支配人「2人で年収4000万円」の“秘密”とは? 夫婦・カップルで1店舗を運営、住み込みだから貯金も効率的に』が掲載された。

判決は7月10日に「異例の延期」となり、スーパーホテルの思いどおりに行かなかった。この詐欺報道は、スーパーホテルが裁判外に証拠文書を公開されない「閲覧制限」という制度を悪用して行ったものである。

報道の「年収4000万円」というのは、これまでの「虚偽広告」の年間報酬額の「4倍」であり、度が過ぎた嘘だ。また、裁判証拠の乙12号証「報酬(客室数×契約年数)」と比較しても、虚偽である。

文字で事実を伝えよう。最大の客室数は「281~310室」であり、1年目から8年目までの報酬が設定されている。この客室数の1年目より示して行くと、1258万円、1311万円、1363万円、1363万円、1416万円、1468万円、1521万円、1573万円である。

また、乙52号証には、各ホテルの客室数などの情報があり、乙12号証の客室規模別にホテル棟数をまとめたのが、つぎのグラフである。なお、「311室以上」の表記があるのは、乙52号証に該当ホテルがあるためである。

客室数の増加に比例して報酬が増える仕組みとなっており、約80%が120室以下である。したがって、上記の報酬より低くなる。たとえば、「101~120室」の1年目892万円から944万円、997万円、997万円、1049万円、1102万円、1153万円、最後8年目が1206万円である。

以上のことから「日刊SPA!」の記事だと、はじめの1年目で年収4000万円がもらえるような誤解を生じさせているが、年収4000万円を賄うような報酬体系は存在しない。

この詐欺報道にだまされると、メンバーたち以上のひどい目にあう。破産や個人再生させられて、働かされる運命に陥ることになる。

『官報』スーパーホテルの「店舗住所」での破産の例

『官報』スーパーホテルの「店舗住所」での個人再生の例

そのつぎに処罰の脅威は、段階がつくられている。

最初の段階は、「50日研修の合格」を契約条件として、つぎのように「住居」「収入源(貯金)」などの生活手段を奪うものである。処罰の脅威となる「処罰」を獲得するためだ。

支配人・副支配人となる「50日研修の合格」が契約条件である。研修の間、男女ペアは泊まり込みで研修する。その研修合格後、すぐに全国転勤となる。

スーパーホテルはそう説明して、「自宅退去」「廃車」「育児と介護の代替策」「家財の倉庫保管」「退職」などの生活を捨てるよう命じる。また、「借金の有無」も重要な確認事項だ。

これら条件に従うペアが、スーパーホテルに「処罰の脅威」を行使させる、つぎのような段階に入るのだ。この段階は、研修合格と契約締結をめざすものであり、同時に自力救済を無効化する期間でもある。

厚労省『2019年国民生活基礎調査』によれば、ベンチャー支配人制度のターゲットとなる貯蓄額200万円までの世帯の割合は、つぎのとおりである。

貯蓄額200万円までのうち、高齢者世帯以外の世帯が「30.0%」であり、児童のいる世帯は「30.9%」となっている。また、1世帯あたり平均借入金額もつぎのとおりである。

高齢者世帯以外の世帯の平均借入金額は「574.5万円」であり、児童のいる世帯では「1119.7万円」となっていた。

毎月の生命保険や倉庫代、ローン、研修宿泊費と交通費の立替払いなどの支払いも行いつつ、50日研修に参加することになる。仮に研修50日後に合格して、契約開示「ウソの条件発覚」を迎えたら、自力救済するのにいくら資金が必要だろうか。

金額の試算は難しいが、日数計算は簡単だ。

住みついて働く拠点の確保だけで、研修50日と住宅確保30日、合わせて80日分以上の生活費が必要だ。さらに就職して収入源の確保に、追加で30日は必要だろう。

110日分の生活費に、敷金礼金紹介料など家賃の6ヶ月分を見込む必要がある。

これでは、先に述べた統計の世帯の30%くらいは、自力救済が無理のように感じる。メンバーの実体験でも、研修参加した全員が契約に進んだ。

ここにきて、スーパーホテルがはじめて「処罰の脅威」を行使する。

それは、「住居」「貯蓄(収入源)」がないことを強要手段に、スーパーホテルの「宿直室」という住居、さらに「時給相場の半額程度」の報酬などで働く業務委託契約書にサインさせるものだった。

その契約内容を考えると、本当にぞっとする。

公的な届出は、スーパーホテルの言うとおりだ。住民票を強制転入させられて「24時間労働体制」を構築させられる。契約だけで「150万円」の保証金が借金となる。

メンバーたちのスーパーホテルJR上野入谷口では、この保証金150万円を毎月の委託料から10万円ずつ15ヶ月も天引きされた。そんな少ない委託報酬の不足分を補うために働くのだ。当然のように「破産者」や「個人再生」するペアが出る。

破産しても働く死を覚悟した労働なのは、察しがつくと思う。

劣悪な労働条件と環境にもかかわらず、病気入院や妊娠したら、現金を持たない状態で解除され、自宅と仕事を同時に失う。

ペアの女性が妊娠した場合が最悪だ。

スーパーホテルの社員が来て「堕胎」を迫るのだ。つぎの命令を紹介しよう。真実味がわくはずだ。

スーパーホテル経営陣が正社員とベンチャー支配人・副支配人に発令する社内イントラネット「SUPERWARE15」から引用する。

発信日時「2018/03/16 16:11」の「【新制度】『母子健康管理制度』のご案内」というものが、つぎのようになっている。

「妊娠・出産後も業務委託契約を解約することなく、安心して継続・延長できる環境を整えることを目的とします。」

「コンサルタント本部北原秀造」と元取締役の名前で出されていた。ようするに「2018年3月16日」まで妊娠したら解除されていたのだ。

繰り返しになるが、破産させられても働くこと。

『官報』スーパーホテルの「店舗住所」での破産の例

『官報』スーパーホテルの「店舗住所」での個人再生の例

そして、内田辰也課長や芝原次長が殴りつけて「暴行監禁」し、業務を大木育総支配人が取り上げ、山本晃嘉副会長と奥森賢治部長が脅迫して働かせること。

これが業務委託契約なのだろうか―—

こんな裁判をメンバーたちは5年以上も続けている―—日本が批准したILO強制労働条約の「強制労働」に決まっている。

「4年で3000万円」も貯まると広告する仕事で「破産」や「個人再生」、「堕胎を迫られ」それでも働かされるベンチャー支配人たち。

自民党がつくったこの国の制度なのだ。

詳しくは、『Modern Slavery Watch”労働基準法第9条 現代奴隷のつくり方』を見てほしい。ただし、すでに紹介のように「マニュアル」「緊急連絡先」「組織図」などは、裁判所に押収・公開禁止された。

現弁護団のおかげで、それ以外はすべて閲覧可能である。

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奴隷解放宣言(1863年)前のアメリカで、あなたがホテルに宿泊したとしよう。今のスーパーホテルと同じ印象で宿泊できるはずだ。それは、黒人の奴隷とされた被害者たちから心地よいサービスを受けられる。

当然だ!死に物狂いの好意を示したものだからだ―—きっと、あなたの心にも伝わる。それが人間なのだから―—

ただし、あなたが「黄色人種」ではなく「白人」だった場合である。