カメラが映す自民党歴代「首相の言葉(演説)」に、多くの日本国民がその決断を歓迎し、自民党に投票させる結果ともなってきた。その反復で出現したのが、今の日本社会ではないだろうか――

戦後、自民党は政権に君臨してきた。野党経験はわずか4年ほどしかない。すなわち「日本人の働き方」は自民党がつくったと言える。

いや、あらゆる日本の社会構造や秩序がつくられたと言えよう――

自民党という政治集団は「経団連(日本経済団体連合会を略す、使用者の団体組織のこと)」を優遇する政策を行う見返りに「献金」と「組織票」を要求してきた。ゆえにずっと自民党は政権に君臨し続けられたのだ。

数万の労働者を抱える大企業が結集した経団連は、潤沢な「献金」が行える資金力があり、御用組合に号令をかければ「組織票」が集まる。この組織票は当選するのに有利に働く重要なものである。

たとえば、さびれた町外れにラーメン屋がポツンと一軒だけある光景を、一度は見た経験があるはずだ。なぜ潰れないのかと思ったことだろう。固定客がいるから潰れないのである。

組織票も固定客と同じで、その時ごとの選挙情勢に左右されない支持票が競合候補者より多ければ、確実に当選できるからだ。

派遣法と昭和60年報告もそうした政権(中曽根内閣)ではじまった。いわば「労働分野」における使用者への優遇政策である。しかし、カメラに映る首相の言葉を聴くと、そのように不思議と感じないのである。

あなたも気づいていると思うが、政治への期待とはまったく異なる現実が日本を覆い続けてきた。

じつは「税制分野」でも、中曽根内閣は使用者を喜ばそうとしていた。それが「売上税」であった。国会で不成立となるが、つぎの竹下内閣で「消費税」と改名され成立している。

竹下内閣とは、中曽根内閣の使用者優遇の政策を「労働分野(昭和60年報告を誇示した光GENJI通達)」だけでなく「税制分野(消費税)」でも継承した政権であった。

れいわ新選組の言う「法人税減税の穴埋め」のために消費税が導入されたことがよくわかる。事実、竹下内閣から消費税率が上がるたびに法人税率は下がっていた。詳しくは内閣府ホームページ「(新旧)税制調査会」の会議資料で確認してほしい。

今度はカメラが映さない「自民党の本性」を書かなければならない。 2008年(平成20年)年末、日比谷公園には多くの派遣労働者がテントの中で“年越し”を迎えていた。あなたはつぎの映像を記憶しているだろうか。

派遣法が犯罪合法化の所以は、社会危機のたびに起こる「派遣切り」の惨劇にある。そして「廃止」どころか「改悪」され続けてきたことは言うまでもない。

つぎのグラフに目をやりながら読んでほしい。

96年(平成8年)の橋本内閣で26業種に拡大。99年(平成11年)の小渕内閣はネガティブリスト(建設、医療、製造など)を除く原則自由化に踏み切る。2004年(平成16年)の小泉内閣では、ネガティブリストを1年限定だが解禁した。さらに2007年(平成19年)の安倍内閣は1年から3年へと延長する。

その結果、2008年(平成20年)の派遣労働者数は200万人に近づく198万3336人に達した。 つぎのグラフに目を移そう。

先に述べた製造業派遣(ネガティブリスト)の解禁と3年延長は、グラフの「04-08年」期を124万人へと派遣労働者を“爆増”させた。製造業派遣の解禁は、工場周辺に「社宅つき」で働く派遣労働者を増やす。

もしも失職すれば現住所も同時に失うリスクがあり、多くは無職のホームレスしか選択肢がなかった。なお、派遣切りだけがホームレスの全部ではないとも言い添えておく。

2008年9月の「リーマンショック」、さらに2011年(平成23年)3月の「東日本大震災」と「福島原発の放射能汚染」へと日本は苦難に突入して行く。

こうした社会危機によって「09-13年」期の短期間に“72万人”もの派遣労働者(国民)が失職し、生活の糧と住居を同時に奪われた者もいる。たとえると、中堅都市ひとつがまるごと失業を経験したことになる。

先の「年越し派遣村」は自民党政策に起因した惨劇なのだ――

最初のグラフに目を戻そう。

2012年(平成25年)のアベノミクス(安倍内閣)によって、第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」を庶民が実感できたのは、大きく開かれた非正規(派遣労働)の門戸でしかなかった。

93年(平成5年)の完全失業率2.5%、派遣労働者数は23.6万人。それからコロナ禍前の2019年(令和元年)となり、完全失業率2.4%で93年より低いが、派遣労働者数は183万人(約8倍)へと増えている。

つまり、惨劇(派遣切り)があるにもかかわらず、派遣労働が雇用の“受け皿”となっていたのだ。

アベノミクス下の2016年(平成28年)ごろより派遣労働者数が急増する。2020年(令和2年)の派遣労働者192万人を通過点とし、2022年(令和4年)には、過去最高の214万人に達した。

そこへコロナウィルスの猛威が日本を襲ったのである。

ABCテレビ「シリーズ苦難のときこそ」は「新たなホームレスを救え」を放送した。その冒頭で安倍総理(当時)は「雇用と生活は断じて守り抜いていく」と言う。カメラに映る首相の言葉を聴けば「もう大丈夫だ」と思ってしまうから不思議である。

しかし、安倍元総理自身が派遣人口を爆増させる法改正を行い、惨劇の傷口を広げた“張本人”のひとりだった。 カメラに映らない自民党の正体は――まったく違うのである。

毎日新聞は、ある派遣労働者だった人のコメントをつぎのように伝えている。

「普通じゃない生活を選んだ自分の責任。」 ところが“普通じゃない”雇用制度をつくる政府自民党が元凶である。もともと1985年まで「派遣」は、それゆえに犯罪とされていた――

最後に自民党の日本版現代奴隷制度に話を変えよう。

自民党の歴代内閣が継承してきた昭和60年報告。それは見直されることもなくILO強制労働条約にあたる「強制労働」を使用者に許してきた。

労基署はもとより裁判所さえもこれに“倣う有りさま”である。

昭和60年報告の“最大の問題点”は、使用者に「法的正当性」を与えてしまうことである。すなわち、強制労働は日本の“正当な労働様式”であると社会的合意形成がつくられてしまうことなのだ。 事実、スーパーホテル事件の裁判においてつぎの証拠が提出された。使用者に法的正当性を“実感”させた結果がこれである。

警察官が公務執行するかの如く内田辰也課長と芝原次長が殴りつけて「暴行監禁」し、業務を大木育総支配人が取り上げ、山本晃嘉副会長と奥森賢治部長が「脅迫・指示」する。 山本晃嘉氏に指示された芝原邦佳次長は「被害現場写真撮影報告書」のように検察に書類送検され、そのあとなぜか退職?(トカゲのしっぽ切り?)している。

業務委託契約ならば「長時間拘束」や「妊娠罰金のような報酬以上の経費負担」などがあっても、それは当然なのだとあなたは思うだろうか――

ちょっと言い方を変えれば、あなたは「リスクは承知のうえでしょ、フリーランスなんだから」と簡単に切り捨てるはずだ。

それが強制労働を認めさせる“社会的合意形成の怖さ”である。

強制労働はすでに述べたようにそもそもが「奴隷制」でもある。人間の所有権制度であり、就学や労働、私生活までも決定する権利を有している。事実、スーパーホテルは奴隷制に“一歩足を踏み入れ”ている。

個人事業主としての公的届出書類の記載内容はすべてスーパーホテルが決めていたこと。ホテルへの強制転入、妊娠制限などは私生活そのものであろう。

妊娠制限は特に述べよう。

スーパーホテル経営陣が正社員とベンチャー支配人・副支配人に発令する社内イントラネット「SUPERWARE15」の命令には、つぎのようにあった。

発令「2018/03/16 16:11」の「【新制度】『母子健康管理制度』のご案内」というものにはつぎの記載がある。

「妊娠・出産後も業務委託契約を解約することなく、安心して継続・延長できる環境を整えることを目的とします。」

「コンサルタント本部北原秀造」と取締役(当時)の名前で出されていた。ようするに「2018年3月16日」まで妊娠は解除か堕胎を選択させられていた。

それだけでなく「母子健康管理制度」もひどいもので、産前6週間・産後8週間の休業が「強制」され、その間無給なのにアルバイト代と夜間警備員代を負担させられる。

このまま強制労働を放置すると、スーパーホテルの“契約プロセス”のような「虚偽条件を信じこませる(非任意性)」ことにより「契約の債務不履行請求権など(処罰の脅威)」で労働を強要された結果、破産や個人再生へ追い込まれる人々が正当化されてしまう。

『官報』によれば、ベンチャー支配人の「破産」や「個人再生」はスーパーホテルの宿直室から裁判所に申立て、そのまま働いた状態で決定を迎えていた。破産の決定まで2ヶ月くらい。また、個人再生は6ヶ月以上もかかっていた。

「借金返済」と「生活」の両立を夢見て、応募したはずである――

スーパードリームプロジェクトと題する「ベンチャー支配人募集」において、「報酬額4650万円以上」や「4年で3000万円が貯まる」などの“魅力的な虚偽情報”が広告され、説明会で案内される。

ベンチャー支配人となるには50日間研修の合格。また、住居や仕事などを処分して配属後にすぐ転勤できるようにしなければならない。

喜び勇んで準備を終えて研修に参加するが、死に物狂いで研修合格をめざした挙句。契約書の開示で“だまされた”事実を知る。怒りと絶望を噛みしめながら宿直室に引っ越しすることになる。

そして、とうとう働き疲れ果て、裁判所に破産や個人再生を申立てる。けれども裁判所の決定までは働かされ続けるのだ。

全国のスーパーホテルの「住所」によって、裁判所に申し立てが行われたことで特定できた。したがって、強制的に転居させられ、そこから申し立てを行ったものは含まれていない。

どれだけの人々が破産や個人再生に追い詰められたのか推計できない――

ある人は心身に異常をきたしても「休日」さえ取れない。ある人は「堕胎か解除」を迫られる。ある人は疲れ果て「労働から逃れる」ために破産や個人再生する。メンバーたちは「生き残る」ために団体交渉するが暴行監禁され仕事と住居を奪われた。

すべて自民党がつくった、この国の制度である――

名ばかり個人事業主は「身近な社会問題」だと述べたと思う。

カメラに映る総理や大臣の言葉は、これまでは使用者優遇政策であっても国民は違和感なく聴けるものだった。しかし、いまや前述のような「(社説)内閣府コンペ 新藤大臣の見識を疑う」は、各方面からの反論が噴出した証左である。

すなわち、昭和60年報告や名ばかり個人事業主を「許さない世論」が醸成されている。すでに「解決されるべき社会問題」になったのだ。

告発サイトの『Modern Slavery Watch”労働基準法第9条 現代奴隷のつくり方』を見てほしい。紹介のように「マニュアル」「緊急連絡先」「組織図」などは裁判所に押収されて公開できなくなった。

しかし、優秀な現弁護団の奮闘によりそれ以外はすべて閲覧可能である。

自民党の新たな労働者、派遣労働者は「非正規4割」という日本の“不安定な雇用社会”を代表する法的正当性を得た制度に昇華した。そして、名ばかり個人事業主の制度もフリーランス新法で完成したと言えよう。

コロナ禍において“事業者を自認させる(募集型)”の名ばかり個人事業主が日本経済を支えていることに注目が集まった。その代表格はアマゾンやウーバーイーツの配達員である。

彼らが「労働者性判断を求める手続き」には、昭和60年報告の制度という“甚大な不利益”との戦いが待っていることもわかったように思う。自民党はこうした「疑問を抱く者」に“制裁”を暗示し、事業者を自認させるフリーランスを推進するために、フリーランス新法をつくったのだ。

「行政」と「立法」は自民党に牛耳られ当てにならない。

そうすると日本の雇用社会を救えるのは――「司法」ということになる。